0.はじめに
外国人介護職員の受け入れ後、現場で不安になりやすいのが申し送りと介護記録です。
日常会話に困らなくても、利用者の変化を事実に沿って短く書くこと、優先順位をつけて次の職員へ伝えることは別の力が求められます。
ここを本人の日本語力だけの問題にすると、分からないまま記録する、確認をためらう、教育担当者ごとに教え方が違う、といった状態になりかねません。
この記事では、外国人介護職員の申し送り・介護記録ミスを防ぐために、施設が整えたい教育の順番と仕組みを解説します。
1.ミスを防ぐ鍵は「日本語力」だけではない
介護記録と申し送りでは、次の3つを同時に行う必要があります。
| 必要な力 | 具体例 | 教育で確認すること |
| 観察する力 | 食事量、表情、歩行、排泄の変化に気づく | 何を見るかを理解しているか |
| 事実を分ける力 | 「ふらついた」「眠そうだった」を混同しない | 見たことと推測を分けられるか |
| 伝える力 | いつ・誰が・どうなったかを伝える | 記録と口頭で要点を言えるか |
日本語が流ちょうでも、施設独自の記録様式や判断基準を知らなければ正確な記録はできません。
反対に、文章を書くことがまだ苦手でも、定型表現と確認の手順があれば、段階的に任せられる場合があります。
記録・申し送りの教育体制をどこから整えるか迷う場合は、まず「夜勤前に確認したい業務」と「現場で使う日本語」を書き出してみてください。
受け入れ準備を整理したうえで、FUJI CAREへ相談することもできます。
2.申し送りと介護記録で起こりやすい4つのつまずき
1. 情報を聞き取れても、重要度を判断できない
介護現場では、利用者の小さな変化が次のケアや安全管理につながります。
ただし、すべてを同じ重さで伝えると、次の職員が重要な情報を見落とすおそれがあります。
まずは「すぐに報告すること」「記録に残すこと」「通常の経過として共有すること」を、施設内で具体例とともに整理しましょう。
2. 見た事実と判断・感想が混ざる
例えば「元気がない」は便利な表現ですが、受け手によって意味が変わります。
表情、発語、食事量、睡眠、歩行など、観察した事実へ分解して書く教育が必要です。
| 曖昧な記録 | 事実に寄せた記録の考え方 |
| 元気がない | 表情、会話量、食事量、活動量を確認する |
| 具合が悪そう | いつから、どの症状があり、誰へ報告したかを整理する |
| 転びそうだった | どの場面で、どのようなふらつきがあり、どう対応したかを記す |
3. 分からない言葉をそのままにする
略語や口語的な言い方は、配属されたばかりの職員には伝わりにくいことがあります。
「分からないときは聞く」だけではなく、誰に、どのタイミングで、どう聞くかまで決めることが大切です。
4. 記録だけ、申し送りだけを別々に教える
記録は後から読める情報、申し送りはその場で優先事項を共有する情報です。
役割は違いますが、内容が矛盾すると現場は混乱します。
教育では、同じ事例を使って「記録ではどう書くか」「申し送りでは何を先に言うか」をセットで練習しましょう。
3.任せきりにしない5段階の教育方法
最初から一人で記録と申し送りを担わせるのではなく、次の5段階に分けると安全に進めやすくなります。
| 段階 | 本人が行うこと | 教育担当者が行うこと |
| 1. 読む | 過去の記録・申し送りを読む | よく使う表現と意味を説明する |
| 2. 選ぶ | 定型文・チェック項目から選ぶ | 判断が必要な箇所を補足する |
| 3. 書く | 短い記録を下書きする | その場で修正理由を伝える |
| 4. 伝える | 教育担当者の同席で申し送る | 順番・要点・聞き返しを確認する |
| 5. 任せる | 通常業務として記録・申し送りを行う | 定期的に記録を振り返る |
大切なのは、修正だけで終わらせないことです。
「どの情報が足りなかったか」「なぜその順番で伝えるのか」を言葉にして伝えると、次の場面でも再現しやすくなります。
4.施設内でそろえたい4つの仕組み

よく使う介護用語のミニ辞書
専門用語だけでなく、施設で使う略語、記録ソフトの項目名、利用者対応でよく使う言い回しをまとめます。難しい説明文ではなく、短い例文と一緒に渡すと現場で使いやすくなります。
申し送りの型
「誰に」「いつ」「何があったか」「何をしたか」「次に何を見てほしいか」の順番を共通化します。緊急度が高い事例と、通常の経過観察の事例を分けて練習すると効果的です。
記録の良い例・修正例
実在の利用者情報をそのまま使わず、匿名化した例や架空の事例で示します。良い記録だけでなく、曖昧な記録をどう直すかを比べると理解しやすくなります。
聞き返しを歓迎するルール
安全に関わる場面で確認することは、能力不足ではありません。聞き返しを歓迎すること、曖昧な指示は言い直すことを、教育担当者だけでなくチーム全体で共有しましょう。
5.夜勤・単独判断の前に確認すること
夜勤や少人数帯では、状態変化に気づいた職員が短時間で報告・記録する場面が増えます。
配置を進める前に、次の点を確認してください。
- 急な体調変化を見つけたとき、第一報を誰へ入れるか分かる
- 発見時刻、利用者の状態、実施した対応を短く伝えられる
- 口頭で伝えた内容を、施設のルールに沿って記録できる
- 分からない判断を一人で抱え込まず、連絡できる
- 緊急時の電話・連絡先・指示系統を理解している
夜勤可否は、日本語試験の合否だけで決めるものではありません。
本人の業務理解、教育の進捗、施設側のフォロー体制を合わせて判断する必要があります。
6.登録支援機関と施設の役割を分けて考える
特定技能1号では、受入れ機関に支援計画の作成・実施が求められ、登録支援機関へ支援を委託することもできます。
一方で、施設独自の記録様式、申し送りの手順、利用者ごとのケア方針は、現場と切り離して教えることはできません。
施設側は業務教育の責任者と確認の流れを決め、登録支援機関には日本語学習機会、相談対応、定期面談などを含めた支援を相談する、と役割を分けると進めやすくなります。
7.FUJI CAREに相談できること
FUJI CAREでは、特定技能「介護」の受け入れを検討する施設に向けて、採用前の確認項目から配属後の支援体制まで整理を支援しています。
- 記録・申し送りで必要な業務日本語の洗い出し
- 教育担当者と登録支援機関の役割分担の整理
- 夜勤前の確認項目づくり
- 日本語支援、生活支援、定期面談を含めた受け入れ設計
現場で困りやすい点を採用前から共有しておくと、本人にも既存職員にも無理のない立ち上がりをつくれます。
8.まとめ
外国人介護職員の申し送り・介護記録ミスを防ぐには、日本語力だけを評価するのでは不十分です。
観察、事実と判断の切り分け、報告の優先順位、聞き返しの仕組みを、施設の業務として教えることが重要です。
関連記事として、外国人介護職員の日本語教育は施設でどこまで必要か https://fuji-careworks.jp/blog/foreign-care-worker-japanese-training/、
外国人介護職員を夜勤に入れる前に確認すべき日本語力と緊急対応 https://fuji-careworks.jp/blog/foreign-care-worker-night-shift/、
外国人介護人材が定着する施設の共通点と支援体制 https://fuji-careworks.jp/blog/foreign-care-worker-retention/もあわせてご確認ください。
この記事に関連するページ
参考情報
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」
執筆・監修:株式会社FUJI CARE 千葉県松戸市を拠点に、特定技能「介護」分野の人材紹介・義務的支援を中心に提供。



