0.はじめに

訪問介護で外国人介護職員が一人で利用者宅を訪ねるとき、事業所側で確認したいのは、困った場面で実際につながる連絡先と、現場を支える体制です。電話番号を渡すだけでは、担当者が出られない場合や、電話で状況を伝えにくい場合の対応が残ります。

この記事では、特定技能「介護」の職員を訪問介護へ配置する事業所に向けて、不測の事態が起きたときの連絡・対応・引き継ぎを整理します。

1.まず結論

緊急時対応は、安全確保と必要な通報を優先し、事業所への連絡、現地応援、記録までつながる形で準備します。外国人職員だけに判断や解決を任せないことが基本です。

  • 第一連絡先が応答できない場合の代替先を決める。
  • 駆け付ける職員と、利用者・家族等への連絡を担う人を決める。
  • 単独訪問の前に、電話がつながらない場面も含めて訓練する。

2.連絡表と一緒に駆け付け・情報共有の体制を整える

厚生労働省の通知では、訪問系サービスに従事する外国人介護人材のために、緊急連絡・対応のマニュアル、想定研修、他の職員が駆け付けられる体制、記録や申し送りの共有を整えることが示されています。厚生労働省「訪問系サービス従事における留意点」

連絡表を作る際は「誰につながるか」と「つながった後に誰が動くか」を一組にします。登録支援機関へ連絡できることだけで、事業所の緊急対応体制が整ったと考えないようにしてください。支援機関の契約上の役割と、介護サービスを提供する事業所の対応は分けて確認します。

資格・経験、同行、利用者への説明など、配置前の要件全体は訪問介護で特定技能外国人を受け入れる要件と手順で確認できます。

3.現場で迷わないよう状況別の行動を決める

フローは、どの場面でも最初に上司へ電話する一列の順番にしないことが大切です。生命の危険などがある場面では、事業所の承認待ちで必要な通報を遅らせないようにします。

次の表は、事業所が自らのマニュアルを点検するための運用例です。利用者ごとのケア計画や医療職との連携方法を踏まえて具体化してください。

状況 現場職員が最初に行うこと 事業所が引き継ぐこと
意識がない、普段どおりに呼吸していないなど、生命の危険が疑われる 周囲の安全を確認し、119番通報。指令員の指示と受講した救命講習等に沿って対応する 他職員の応援、家族・関係者への連絡、以後の訪問の調整
暴力や脅迫などで職員の安全が脅かされる 安全な場所へ離れ、緊急の危険があれば110番通報。安全を確保して事業所へ連絡する 本人の保護、管理者による状況確認、サービス継続方法の判断
ケア中の異変や、対応方法が分からない事態 分からないまま処置を進めず、利用者の安全に配慮して責任者へ連絡する。切迫した危険があれば通報を優先する 医療職等への相談、現場への指示、必要な応援
訪問しても応答がない、予定と状況が異なる 無理に立ち入らず、利用者別の手順に沿って連絡する。緊急性が疑われる場合は対応を切り替える 関係者への確認、安否確認の手配、次の行動の決定

救急通報では、住所、利用者の状態、通報者の連絡先等を落ち着いて伝えます。医学的な判断を外国人職員一人に求めず、指令員や医療職につながる手順を用意します。消防庁「119番緊急通報」

職員が危険な場所から離れる場合も、事業所は利用者の安全確保を別途手配します。「職員を守ること」と「利用者への対応」を同時に進める担当を決めておくことが必要です。

4.第一連絡先が応答しない場合の代替手段を決める

連絡先は、担当者一人の個人携帯に依存させず、勤務時間中に応答できる人と代替先を設定します。早朝・夕方や休日にサービスを提供する場合は、その時間帯も確認します。

連絡表に入れる項目 事業所で決める内容
第一連絡先 その時間帯に応答する責任者・窓口
応答がないときの代替先 次に電話する責任者・事業所番号
現地へ向かう職員 担当者と、その人が動けない場合の代替
関係者への連絡担当 家族、ケアマネジャー、医療職等へ誰が連絡するか
通信・端末の不具合時 通常の音声通話等、使える別の連絡方法
対応終了の確認 誰の判断で次の業務へ戻り、誰へ引き継ぐか

応答がないときに何度も同じ番号へかけ続けるのか、すぐに代替先へ移るのかも、場面別に練習します。緊急性が高い場合は、折り返しやチャットの既読を待つ運用にしません。

通信障害で119番がつながらない場合について、消防庁は公衆電話の利用や近隣の人・店への通報依頼などを案内しています。訪問エリアで使える代替手段を事前に確認しておきます。消防庁の通信障害時の案内

5.報告する内容を短い言葉でそろえる

緊急時は、流暢な説明よりも、場所と現状、必要な助けが伝わることを優先します。電話を受ける側も、長い質問を続けず、一項目ずつ聞くようにします。

事業所への報告は、次の順番を練習すると整理しやすくなります。

  1. どこか:訪問先の住所や、事業所内で定めた利用者の識別方法。
  2. 何が起きたか:自分が見たこと・聞いたことと、発生時刻。
  3. 今の状態:利用者と職員の安全、状態の変化。
  4. 何をしたか:通報の有無、実施した対応。
  5. 何が必要か:指示、応援、関係者への連絡など。

受け手は、次の行動を短く伝え、本人の言葉で復唱してもらいます。これは日本語の誤りを評価する試験ではなく、指示が同じ意味で伝わっているかを確かめるための手順です。

訪問先の情報を端末等で確認できるようにする場合は、利用者の個人情報を扱う事業所のルールに従います。私物のSNSや、許可していない翻訳・生成AIサービスへ情報を貼り付けることを前提にしません。

6.同行期間に連絡から引き継ぎまで実演する

単独訪問へ進む前に、本人が実際に連絡し、責任者が応答し、必要な助けを手配できるかを確かめます。マニュアルを配ったことだけで、運用できると判断しないことが大切です。

訓練では、通常の連絡に加えて次の場面を設定すると、準備の不足を見つけやすくなります。

  • 第一連絡先が応答せず、代替先へ切り替える。
  • アプリが使えず、別の連絡方法を使う。
  • 状況をうまく説明できず、受け手が短い質問で確認する。
  • 応援が必要になり、到着までの行動を確認する。
  • 対応後に、事実と指示内容を分けて記録する。

通報の練習は模擬の相手と行い、訓練目的で実際の119番や110番へかけないようにします。本人が困った箇所だけでなく、電話を受ける責任者側の説明や代替要員の不足も改善します。

対応後の記録には、起きたこと、連絡した時刻、受けた指示、実施した対応、引き継ぎ先を残します。ヒヤリとした場面も振り返り、同じ場面で誰が対応しても動けるようにします。

7.配置前に事業所と外部支援の役割を確認する

訪問介護での緊急時対応は、職員本人の努力だけでは成立しません。連絡表、駆け付け要員、短く伝える練習を、事業所の管理者と現場職員が一緒に確認することが必要です。

株式会社FUJI CAREは、特定技能「介護」の人材紹介と登録支援を行っています。訪問介護への配置を検討している場合は、予定する業務、同行・研修の準備状況、事業所内の連絡体制を整理してご相談ください。施設側で担う対応と、外部に相談したい支援範囲を確認する材料になります。

訪問介護での受け入れ準備と支援の役割分担を相談する

執筆:株式会社FUJI CARE