0.はじめに
外国人介護職員を受け入れるとき、ハラスメント対策を「外国人材向けの特別なルール」として切り離す必要はありません。大切なのは、全職員に共通する防止方針と相談の仕組みを、本人にも現場にも分かる形で運用することです。
介護現場では、指導、業務分担、利用者や家族との関わりが日々重なります。言葉や立場の違いで相談をため込まないよう、配属前から方針、相談先、聞き取り、再発防止の順番を決めておきましょう。
1.まず結論
外国人介護職員へのハラスメント対策では、特別な制度を増やす前に、全職員共通の防止方針、複数の相談経路、相談後の初動を配属前に決めることが重要です。
- 禁止する言動と、業務上必要な指導の伝え方を分ける
- 本人が相談できる施設内外の窓口と緊急連絡先を示す
- 安全確保、事実確認、対応決定、再発防止の担当と期限を決める
2.ハラスメント対策は、相談が起きてからではなく受け入れ前に整えます
事業主には、職場のハラスメント防止に向け、方針の周知、相談体制、事実確認と適切な対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止などの措置が求められます。介護施設では、これを就業規則だけに置かず、配属時の説明と管理者・教育担当の行動までつなげることが重要です。
まずは、次の4点が現場で説明できる状態かを確認してください。
| 確認項目 | 施設で決めること |
|---|---|
| 防止方針 | 何が許されない言動か、相談してよいこと、指導と人格否定を分ける考え方 |
| 相談の入口 | 本人が相談できる担当者、担当者が不在のときの連絡先、緊急時の連絡方法 |
| 相談後の流れ | 安全確保、事実確認、対応の決定、再確認の担当と期限 |
| 守ること | 相談内容を必要以上に共有しないこと、相談・協力を理由に不利益な扱いをしないこと |
「本人が困ったら言ってくれるはず」と考えるだけでは、相談の入口になりません。誰に、どの方法で、何を相談できるのかを、入職時に具体的に伝えます。
3.指導とハラスメントを混同しないために、伝え方の基準をそろえます
介護の安全を守るための注意や指導まで控える必要はありません。一方で、業務上必要な指導であっても、人格を否定する言い方、皆の前での過度な叱責、説明なく業務から外す対応は、職場環境を悪化させます。
教育担当者と管理者は、次のように「事実・求める行動・確認」を分けて伝えると、改善の目的が伝わりやすくなります。
| 場面 | 伝える順番 | 避けたい対応 |
|---|---|---|
| 介護記録の修正 | 事実を確認 → 記録例を示す → 次回の確認時点を決める | 「いつもできていない」と人格や国籍に結びつける |
| 申し送りの不足 | 必要な情報を具体化 → 報告先を示す → 一緒に復唱して確認する | 大勢の前で責め、質問を許さない |
| 業務の遅れ | 優先順位を確認 → 支援が必要な箇所を分ける → 担当を調整する | 一人で抱え込ませ、理由を聞かずに評価する |
2026年8月にFUJI CAREが実施した調査では、採用に関与し詳しい設問に回答した325人のうち、配置後に不安な場面として「介護記録の読み書き」51.7%、「利用者の急変時の連絡・報告」48.6%が上位でした。これらの結果を踏まえ、記録・報告・理解確認の仕組みを施設側で整えることが重要です。
出典:FUJI CARE調べ「介護施設の外国人材受け入れ検討に関する実態調査2026」(2026年8月、採用に関与し詳しい設問に回答した325人、複数回答)
4.相談窓口は「施設内」と「施設外」の役割を分けます
相談先が一人だけでは、その人との関係が相談をためらう理由になることがあります。施設内では人事・管理者・教育担当のうち誰が何を受けるかを明確にし、本人が直接話しにくい内容にも別の入口を用意します。
特定技能1号の支援では、職場や生活上の相談・苦情に、本人が十分に理解できる言語で対応することが支援項目に含まれます。登録支援機関に委託している場合は、生活相談や通訳を伴う聞き取りの分担を確認できます。ただし、職場の安全確保、人事上の対応、ハラスメント防止措置の主体は施設です。委託先へ任せきりにせず、連絡の基準を決めましょう。
| 相談の内容 | まず施設が行うこと | 登録支援機関等と確認すること |
|---|---|---|
| 業務指示・人間関係 | 安全確保、管理者による聞き取り、勤務への影響確認 | 本人が理解しやすい説明・相談の補助が必要か |
| ハラスメントの懸念 | 相談窓口で受理し、必要な範囲で事実確認を開始 | 通訳・外部相談先の案内が必要か |
| 生活上の困りごと | 勤務への影響と緊急性を確認 | 生活支援、行政手続、母語相談の役割分担 |
| 労務・法的な判断が必要な問題 | 施設の規程に沿って専門家・行政機関へ相談 | 支援計画上の記録や本人への説明を連携する |
5.相談を受けたときは、4段階で事実と対応を整理します
早く結論を出そうとして、最初から原因や責任を決める必要はありません。安全を確保し、当事者の説明を分けて確認し、必要な対応と再確認日を決める順序が大切です。
- 安全を確保する:暴力、深刻な精神的負担、利用者の安全への影響がある場合は、通常の面談を待たず配置や連絡体制を調整します。
- 相談内容を受け止める:本人が話した事実、困っている点、希望する対応を分けて記録します。通訳が必要な場合は、内容の正確さとプライバシーに配慮します。
- 事実を確認し、対応を決める:関係者の説明を確認し、就業規則・相談手順に沿って必要な措置を判断します。伝聞だけで処分や評価を決めません。
- 再発を防ぐ:本人へのフォロー、関係者への必要な指導、業務分担や説明方法の見直しを行い、再確認する日を決めます。
相談したことや、事実確認に協力したことを理由に不利益な扱いをしないことは、相談窓口の信頼に直結します。記録の保管・共有範囲も、事前に管理者間でそろえておきましょう。
6.配属前の説明で確認したい6項目
本人だけでなく、教育担当と管理者にも同じ内容を共有します。説明は一度で終えず、初日、1週間後、1か月後に理解を確かめると、相談の遅れを防ぎやすくなります。
- 困ったときに最初に連絡する人と、連絡方法
- 緊急時に一人で判断せず報告する場面
- 業務上の注意や指導を受けたとき、確認や質問をしてよいこと
- 人間関係、差別的な言動、私生活への過度な介入などを相談してよいこと
- 相談内容を誰が扱い、むやみに共有しないこと
- 相談後に不利益な扱いを受けないこと
現場職員には、「分からないときは質問してよい」「指導は業務の事実と次の行動を具体的に伝える」という共通ルールを先に共有します。本人だけに適応を求めず、受け入れる側の説明体制を整えることが予防になります。
7.受け入れ体制を、相談できる状態まで具体化したい施設へ
株式会社FUJI CAREは、特定技能「介護」の人材紹介と登録支援を中心に提供しています。受け入れを検討する施設では、採用条件だけでなく、教育担当、相談窓口、生活支援と施設内対応の役割分担を整理しておくことが重要です。
相談前には、現在の相談先、困りやすい業務場面、登録支援機関へ委託している範囲を確認しておくと、必要な準備を話し合いやすくなります。FUJI CAREへ受け入れ体制について相談するからご相談ください。
8.まとめ
外国人介護職員へのハラスメント対策は、特別な制度を増やすことではなく、全職員に共通する防止方針と相談体制を、現場で使える形にすることから始まります。方針の周知、相談の入口、事実確認、再発防止、プライバシー保護を受け入れ前から整えましょう。
配属後の相談・初動の進め方は、外国人介護職員とのトラブルを防ぐ施設側の対応と相談体制もあわせてご確認ください。
参考情報
執筆・監修:株式会社FUJI CARE 千葉県松戸市を拠点に、特定技能「介護」分野の人材紹介・義務的支援を中心に提供。



